親ケア奮闘記Part3【迷走編】

【迷走編・第24回】サービスを利用したいけど。 その6

例えばどんなことでしょうか?

配食サービスの申込書類に必要事項を記入してKさんに渡すと、「はい、それでは明日のお昼からお届けしますね」とのこと。
父は「良かったぁ、助かったぁ~」などと言っています。

「横井さん、お食事の心配が無くなって良かったですね」
「はい、ありがとうございます」
「そう言えば横井さん、息子さんがいないときは、どうやってお過ごしですか?」
「はぁ、普通に過ごしております」
「お掃除とかは、大変じゃないですか?」
「ボクなりに頑張っております」
「それはスゴイ。ご自身で掃除を頑張っておられるのは立派ですねぇ」
「息子に迷惑ばかりかけられませんから」

私は「頑張ってないだろ」とツッコみたい気持ちを抑えるのに必死。
そんな私をよそに、Kさんの話は続きます。

「お風呂やトイレの掃除は、特に大変じゃないですか?」
「……あぁ、それは息子がやってくれてます」
「良い息子さんですねぇ」
「えぇ」
「先ほども伺いましたが、最近の体調は結構良い感じですか?」
「はぁ、ボチボチです」
「朝や夜に、『ちょっとしんどいなぁ』なんて思うことはありませんか?」
「いや……」
「私も多くの高齢者の方とお話しさせていただくんですが、みなさん、お一人で暮らしておられると、ちょっと体調がすぐれないときは不安な気持ちになられるんですよね。
 横井さんが不安な気持ちになるのは、どういうときですか?」
「やっぱり、身体の調子が悪いときです」
「そうですよねー」

Kさんはグイグイと話を引っ張っていきます。
「そういうときに、息子さんが側にいてくれたら心強いんでしょうけど、普段は大阪で一生懸命に働いておられますからねぇ」
「えぇ、それは仕方ないです」
「私たちでは息子さんの代わりは務まらないでしょうけど、それでもある程度はお役に立てるはずですよ」
「へぇ、例えばどんなことでしょうか?」

救急車を呼ぶ必要なんかありません。

ここに来て、父が自分から積極的に質問をするようになりました。
私から見ても、父がKさんの話に引き込まれていくのがわかります。

「少しイヤな話ですが、息子さんがお留守のときに、急に気分が悪くなって動けなくなったりしたらと思うと、怖くはないですか?」
「それは、怖いです」
「息子さんに電話しても、大阪から駆けつけてくれるのは、何時間も後になってしまいますよね」
「えぇ……」
「でも、ご自身で救急車を呼べる人は滅多にいないんです」
「救急車は嫌いです」

父はかつて脳出血で倒れた際、救急車を呼ぼうとした母を「世間体が悪いがや」などと言って止めた前科があるぐらい、
変なところで格好を付けようとします。
そのときは、私から母にアドバイスを行い、実家まではサイレンを鳴らさずに救急車に来てもらうという方法で解決したのですが、そんな父が自分で救急車を呼ぶ姿は想像もつきません。

「えぇ、だから救急車を呼ぶ必要なんかありません」
「えっ?」
「万一、横井さんの具合が悪くなったとき、ボタン一つで様子を見に来てくれたり、必要があったらお医者さんを呼んでくれるようなサービスがあったら安心じゃないですか?」
「それは確かに安心です」
「そんなサービスが、ただで使えるとしたら嬉しくないですか?」
「それは、もちろん嬉しいです」
「うちで申し込んでいただいたら、それができるんですよ」
「ぜひ、ぜひお願いします」

興奮してKさんに頭を下げる父の姿に驚きつつも、私には大きな疑問がありました。

「Kさん、お話中すいません」
「はい。息子さん、どうされました?」
「それって、緊急警報装置のことですよね」
「えぇ」
「さっき、お話ししたと思うんですが、町内に様子を見に来てくれるような親しい人がいないと、それは利用できないって役場で聞いたんですが」

私の疑問に、Kさんは笑顔で応えました。
「大丈夫です。既に手を打っておきましたから」

【迷走編・第25回】サービスを利用したいけど。 その7については、こちらへ。

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