介護のコラムを読む

親ケア奮闘記Part3【迷走編】

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【迷走編・第18回】高齢福祉課との出会い。

特に心配されている点は、どんなことですか?

父が退院して3週間ほどが経った頃、私は高額療養費の申請のため、町役場を訪れました。

毎月、母の入院代についても申請を行っていたのですが、今回は父の分もまとめて申請することに。保健課の窓口の人から「いつもお疲れ様です」と声をかけられるなど、ちょっとした顔見知りになっていました。

手続きを終えてふと顔を上げると、いつもの「保険課」という看板の真横に、「高齢福祉課」という看板があるのを発見。あまりにだらしない父の姿を見せられ続け、父の独り暮らしに限界を感じていた私は、「何か役に立つような制度ってないかなぁ?」と思い立ち、窓口の職員に声をかけてみました。

「すいません。今、母が入院しているため、高齢の父が独りで暮らしていまして」
「あぁ、はいはい」
「こちらの町で、何かサポートしてもらえるような制度やサービスがあればと思って、声をかけさせていただいたんですが……」
「少々お待ちください」

ほどなくして職員が棚からパンフレットのようなものを持って、窓口に戻ってきました。
「お父さんは、介護保険の要介護認定を受けておられますか?」
「いえ、受けていません」
「普段の生活は、しっかりできているんでしょうか?」
「いや、私がたまに帰省して世話を焼くことで、どうにかこうにかといった感じです」
「息子さんは、どちらにお住まいで?」
「大阪です」
「それは、さぞかし大変でしょう。特に心配されている点は、どんなことですか?」

私は、毎日の食事や水分摂取を怠ったおかげで父が入院したことや、何か問題があったとしても、父がなかなか本当のことを報告してくれないこと、父が一切の家事などを行わず、注意力も散漫なので火の始末が怖いことなどを伝えました。

自分がやっているのは介護なのか?

「そういうことでしたら、まずは配食サービスの利用を検討されると良いでしょうね」
「はぁ……」
「一度、介護保険の認定調査も受けていただいたほうが良いでしょうし、 専門の担当者がいる庁舎が、ここから車で5分ぐらいのところにあるので、相談に行かれてはどうでしょうか?」
「わかりました。ありがとうございます」

私は深々と頭を下げながらも、大きな疑問を抱えていました。

もしかして、自分がやっているのは介護なのか?
介護って、寝たきりの人のおむつを替えたり、車いすを押してどこかに連れて行ったり、お風呂に入れてあげたりすることじゃないのか?

そう。そのときの私には、介護というのは「身体が不自由になった人の身のまわりの世話をすること」といった程度の認識しかなかったのです。

そうした疑問を持ちつつも、父の食事の心配が解決するかもしれないことに希望の光を見たような気がした私は、「父を実家で留守番させておいて良かったなぁ」などと考えつつ、いそいそと車を走らせました。

自分では何もできないくせに、自分が「できる人」であると他人に思われたい父が、「介護」なんて言われた日には、ヘソを曲げるに違いありませんから。

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