親ケア奮闘記Part3【迷走編】

【迷走編・第14回】父の入院。 その7

母への連絡をどうするか。

その後、医師との話し合いのなかで、父の腸内にできたポリープの除去手術は2日後に行われることに。
こうなった以上、父が癌である可能性も考えて行動しないといけません。

まず最初に考えたのは、母への連絡をどうするかでした。
母の精神状態が良好なら、本当のことを伝えるべきなんでしょうが、下手に刺激すると状況を悪化させる危険性があるため、迂闊なことはできません。
判断に迷った私は病院の外に出て、携帯から母の入院している病院に電話をかけ、主治医に事情を伝えることにしました。

私の話をひと通り聞いた主治医は、「当面、このことは内緒にしておいてください」と言いました。
「先日、横井さんとお父さんが面会に来られて以来、不安定な状態が続いています。
 今日も『父さんが殺された』などと言っておられましたし、新たな不安を与えるようなことは避けたいところです」
「そう言えば入院前から、なぜか『父さんが死んだ』と言うことが多かったですね。
 父本人を連れて、写真館で葬式用の遺影を撮影に行ったこともあります……」
「お母さんのなかで、お父さんのことはそれだけ大切でもあり、不安の対象でもあるということなんでしょうね」

まぁ、隠しておくしかないだろうなぁ……。
主治医との電話を終えた私は、互いの意見が一致したことにある種の納得をしていました。

次は仕事の心配です。
もともと、長い休みを取る予定はまったくしていなかったので、大阪には恐ろしい量の仕事が溜まっているはずです。
とは言え、上司や同僚などに状況を伝えないわけにはいきません。

重い気持ちで会社に電話をすると、年輩の同僚が出ました。
「おぉ、横井くん。ゆっくり休めていいなぁ」
一瞬、カチンときたものの、この同僚には直接、詳しい事情を説明したわけではありません。
家の中でのことや親の世話などはすべて奥さんに任せているであろう人からすると、親が入院しているから仕事を休むなどというのは、
のんびり骨休みをするための言い訳みたいに感じられるのでしょう。
私は怒りをこらえつつ「ご迷惑をおかけしています。○○課長をお願いしたいのですが」と頼みました。

横井くん、いつ仕事に戻れるかな?

上司は電話口に出るやいなや「横井くん、いつ仕事に戻れるかな?」と、ひと言。
「いや、それが……」
「○○のまとめ役をしている横井くんの代わりは、誰もできないから」
「いや、その……」
「事情はわかるけど、昨日今日みたいに急に休まれると困るんだよ」
「すいません……」
話すうちに、どんどんと状況を説明しにくい感じになっていきます。

「あぁ、ごめんごめん。こっちばかり話してちゃいかんな。で、そっちはどうなった?」
「実は……」
私は覚悟を決めて、父が癌かもしれないこと、2日後に除去手術が決まったこと、生検をすることになったことなどを伝えました。

「……すまなかった」
私の説明を聞き終えた上司は、そう言いました。

「はい?」
てっきり文句を言われると思っていた私は、思わず間抜けな声を出してしまいました。

「だから、すまなかった。さっき言ったことは、すべて忘れてくれ。
 横井くんの状況もわからないうちから、勝手なことを言ったのを許してほしい」
「いや、こちらこそ……」
「仕事のことは、僕や○○くんが協力して、どうにか対応するから」
「はぁ……」
「きみの代わりは完全には務まらないだろうけど、とにかく任せてくれ」
「……ありがとうございます」

上司に電話を替わってもらい、別の同僚などにいくつかの業務連絡を行うと、みんな口々に「よくわからないけど、なんか大変なことが起きたんだって?」と、心配の声をかけてくれました。
なかには「俺も仕事休んで、何か手伝いに行こうか?」と言ってくれる人まで。

夢中で仕事ばかりしていたときには気がつかなかったものの、意外にやさしい人たちに囲まれていたんだなぁ、などと温かい気持ちになりました。

ちなみに最初に「ゆっくり休めていいなぁ」と言った同僚からは、後日、謝罪の言葉とともに、お茶をおごってもらいました。

【迷走編・第15回】父の入院。 その8については、こちらへ。

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