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親ケア奮闘記Part3【迷走編】

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【迷走編・第13回】父の入院。 その6

先生がお呼びです。

警察署で思いがけない再会を果たした後、病院に戻った私は、父や看護師などと話をしたり、コンビニ弁当を食べたりして過ごしました。父も落ち着いた感じで、私が買い与えたスポーツ雑誌や新聞を機嫌良く読んでいました。

少し安心した私は、夕方早めに実家へと帰り、入院中の母や、大阪にいる妻に状況を報告。
明後日から出社できるだろうと考えていました。

問題は父の生活をどう改善するかです。電話などで「食事はちゃんとしている。水分も取っている」と言うものの、実際はウソだったことが今回の入院で明らかになりました。「次こそはしっかりやる」という父の言葉を、そのまま鵜呑みにすることはできません。

「やっぱり、何か良いサービスを探さないといけないなぁ……」
そんなことを考えているうちに、それまでの疲れから意識を失い、ソファーで眠りに落ちていました。

翌朝。
父の大腸内視鏡検査は、比較的スムーズに始まりました。検査前に大量の下剤を飲んで、腸の中をカラッポにした後、検査室へと連れて行かれる父。昨日の検査室と比べて少し広く、大きな機材がいくつか置かれていました。

私は外で待つことになり、検査室前のベンチに。20分ほど経った頃、一人の看護師が検査室から顔を出し、「先生がお呼びです。入ってください」と言いました。

これが、ポリープです。

少し疑問に思いながら入室すると、モニターを見ながら何かを操作する医師の姿。
「あぁ、こっちの裏にも……」などと、独り言をつぶやいています。
父は検査台に身体を横にして寝ており、時折「痛たたた」などと言っていました。

「先生、お呼びでしょうか?」
邪魔をしないよう遠慮がちに声をかけると、医師はこちらを振り向き、「息子さん、これを見てもらえますか?」と、私にモニターを指さしました。モニターを覗くと、一面のピンク色。父の腸内の様子が映っていました。

「……何か、問題でもあったんですか?」
「今から、画面に細いピンセットが出ますから、それを見てください」
医師がそう話すと同時に、画面の中にピンセットが現れました。
そのピンセットが、腸内の少し膨れたところをつまみ上げます。
「これが、ポリープです」
「はぁ」
「今、ざっと調べただけで、15個ぐらいのポリープがありました」
「はぁ」
「ポリープのなかでも、腺腫性ポリープという種類のものなのですが、1cmを超えると癌化する危険性が高いとされています」

「……え?」
このとき、ようやく私の頭にイヤな予感が浮かびました。
「横井さんの腸にあるポリープは、5mmぐらいのものが多いのですが、なかには1~1.5cmのものもあります。早急に取り除く手術を行い、生研をしたいと思います」
「……」
「もし癌だったとしても、非常に初期での発見ですから」

私は、頭の中が真っ白になりそうなのを懸命にこらえ、「よろしくお願いします」と言うのが精一杯でした。

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