親ケア奮闘記Part3【迷走編】

【迷走編・第11回】父の入院。 その4

ボチボチです。

父を乗せた車いすを押して、内科診察室へ行くと、昨夜の医師が待っていました。
「横井さん、お加減はどうですか?」
「ボチボチです」
「ゆっくり眠れましたか?」
「ボチボチです」
「ふらつきや吐き気は無いですか?」
「ボチボチです」

「とりあえずボチボチなんですね?」
医者は笑って言いました。
「えぇ、ボチボチです」
父はなぜか自信ありげに答えました。

ツッコミたい気持ちをグッとこらえ、私は今日の予定などを医師に尋ねました。
「今から、胃カメラでの検査をします。
 そして明日の朝から下剤などを飲んでもらって、大腸内視鏡検査をします」
「はぁ……」
「高齢でもあるので、1日に2つの検査をするのは、体力的に厳しいんですよ。
まぁ、どちらの検査も念のために受けてもらうようなもんですから」

仕方ない、後で上司に「数日休む」とメールしておこう。
○○の件、やばいなぁ……。
そんなことを考えているうちに、検査の準備ができたようで、検査室のほうへと誘導されました。

2~3分ほど時間の猶予がありそうだったので、私は病院の前のパーキングメーターに戻り、車を少し動かして、再び料金を入れました。
60分おきにこうしておかないと、駐車違反になってしまいます。
「後で看護師に頼んで、適当な駐車スペースを教えてもらわないと……」
そんなことを考えつつ、検査室へ戻ると、父はのどへの麻酔など、いくつかの処置を受けているところでした。

ここまできたら、後は検査を残すだけです。
日曜日で看護師が少ないこともあって、父をベッドに横たえるのところまでを手伝った私は、検査室の外へ出ようとしました。

すると……。父が私のシャツの裾をつかんで離してくれません。
「父さん、今から検査だから。大人しくしなきゃ」
医師の手前、やさしく声をかけたのですが、父は軽く首を振るだけで、私を解放する気は無さそうでした。

その様子を見た医師が、「横井さん、そんなに緊張しなくていいですから。
息子さんにも、ここにいてもらいますから」と、父に話しかけました。

お父さんの手を握ってあげてください。

「え? 私もここにいて良いんですか?」
「もちろん、本来はダメですが、まずはご本人に落ち着いてもらわないといけないですから」

こうして私は手を消毒したうえで、借り物の白衣を身につけて、父の検査に立ち会うことになりました。

「息子さん、お父さんの手を握ってあげてください」
「はぁ……」
なんか、立ち会い出産みたいな感じだなぁと思いつつ父を見ると、涙目どころではなく、涙をこぼしながら私のほうを見つめていました。

胃カメラひとつで、そこまで怖がらなくてもいいようなものですが、父は人一倍苦痛に弱いタイプ。
私が子どもの頃など、風邪でちょっとのどが痛くなるだけで大騒ぎして、母に当たり散らすくせに、「医者に行くと注射されるからイヤだがや」と言って、なかなか病院には行こうとしませんでした。

私は苦笑しながら父の手を握り、検査の様子を見守りました。
胃カメラが少しずつ口から入ると、父は目をむき、身体を強張らせます。
「横井さん、もっと身体の力を抜いて。ラクな感じで」
医師や看護師が声をかけても、父の緊張はなかなか解けません。
結局、鎮静剤の注射などで、さらに時間がかかることになりました。

なんだかんだと時間がかかったものの、検査の結果はシロ。
「多少の炎症はあるが、問題ないですね。
明日の大腸内視鏡検査が終わって、特に問題なければ退院してください」
との医師の言葉に、私はホッとしました。

検査終了後、30分ほどはそのまま横になって安静にする必要があるらしく、片付け終わって医師と看護師が退室した後、父と私は2人だけで検査室に残されました。
とりあえず母に報告の電話をしようかと思い、私も部屋を出ようとしたのですが、父はまだ私の手を握ったままで、離してくれません。よほど心細いようです。
そのまま私は父に付き添い、30分後に迎えに来た看護師と一緒に病室まで父を連れて行くことに。
病室でも私はなかなか解放してもらえず、「トイレに行きたいから」と言って強引に廊下へと脱出しました。

時計を見ると、先ほど車を移動させてから2時間以上が過ぎています。
私は慌ててパーキングメーターのところへ行き、駐禁の黄色いワッカを付けられているのを見て、ガックリときました。

【迷走編・第12回】父の入院。 その5については、こちらへ。

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