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親ケア奮闘記Part3【迷走編】

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【迷走編・第10回】父の入院。 その3

自分は何のために戻ってきたのか?

父の着替えなどを持って、実家から○○病院に戻ったのは、22時を過ぎていました。

時間外出入り口から入って階段で3階に行き、ナースステーションで事情を話すと、「横井さんなら、○○号室ですね。よくお休みですよ」とのこと。

「あ、でも、父は着替えを持っていないんですが」
「本来なら病衣を借りるのか、自前のパジャマを着るのか、選んでいただくんですが、 今日はもう遅かったので、病衣を着ていただきました」
「あ、そうですか」
「○○先生はおられますか」
「少し前に急患があって、手が離せなくなったとのことです。尿検査の結果ですが、特に大きな異常は見られなかったとの伝言を受けております」
「私は先生をお待ちすれば良いんでしょうか?」
「いえ、明日の朝8時までに○○号室に来て、待っていてくださいとのことです」」

それでは自分は何のために戻ってきたのか、と思ったものの、ここで看護師相手に文句を言っても始まりません。父がいるという病室を覗き、いびきをかきながら熟睡している様子を見た後、実家へと帰ることにしました。

その後、翌朝までの記憶は完全に無くなっています。気がついたときには、昨日の服のまま、ベッドに突っ伏して寝ていました。おそらく、呆然と車を運転して実家に帰り着き、風呂にも入らずに眠りに落ちてしまったのでしょう。

7時前には車に乗り込み、再び○○病院へと向かいました。

今から検査に行くから。

病院の駐車場に着くと、門が閉まっていました。どうやら日曜日は外来患者が来ないため、1日中駐車場が閉鎖されているようです。

仕方なく昨日と同じパーキングメーターを使うことに。60分おきに車を移動させたりしないといけないのですが、背に腹は代えられません。

病室に入ると、まだ父は眠っていました。昨日と比べ、顔色はかなり良くなっているようです。ちょっと安心しつつ、ベッド近くにあったイスに座ってボーッとしていると、看護師がやってきて、
「そろそろ準備をして、内科診察室に行ってください」と声をかけました。

「熱とかは計っておいたほうが良いんでしょうか?」
「あ、バイタルはさっき計りました。その後、またお休みになったみたいですね」

父なりに疲れが溜まっていたのかなぁ、などと考えつつ、肩のあたりを軽く揺すって起こすと、「あれ、孝ちゃん? 何か用?」との第一声。
「うん、今から検査に行くから」
「ん……? そんなのイヤだがや」
「昨日、先生と約束したの覚えてないの?」
「でも、イヤなもんはイヤだがや。病院になんか、行くもんかね!」
「えーっと……。ここ、病院なんだけど」

「クスッ」
馬鹿な問答をしていると、ドアのほうから抑えたような笑い声が聞こえ、先ほどの看護師がまた入ってきました。
「横井さん、さっきも言ったでしょ? ここは○○病院。横井さんは、検査をするために入院したんですよ」
「はぁ……」
「心配してくれている息子さんを困らせちゃダメですよ」
「はい、すいません」
「そのままの格好でよいですから、トイレを済ませて、1階に下りてくださいね」
「はい」

自分が言うのと違い、他人の言うことにはなんでこう素直に従うのかなぁ……。
父と看護師が話すのを見つつ、私はそんなことを考えていました。

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