親ケア奮闘記Part2【闘病編】

【闘病編・第12回】入院の日。 その6

かわいそうだ……。

母を入院させた後、私は父と二人で車に乗り、実家へと帰ることにしました。
休暇を取るために仕事を無理やり前倒ししたため、1週間ほど満足に寝ていなかった私は、父に運転をまかせて助手席に座りました。

「さぁ、とりあえず帰ろうか」
そう声をかけた私に、父は黙ったまま答えません。
「ん? どうした?」
父の様子を窺うと、静かに涙をこぼしています。

「父さん……」
「かわいそうだ……」
先ほどの母の様子を見て、父としてもいろいろと感じるところがあったのでしょう。
「父さん……」
「なんで、こんなことに……」
「とにかく今は先生たちを信じて、母さんが治るのを待とう。
 それだけ母さんを心配する気持ちがあれば、きっと通じるよ」

「違う……」
父は涙をこぼしながらも、強く首を横に振りました。
「母さんも大変だが、かわいそうなのはワシだ」
「え?」
「ワシは母さんがいなければ何もできない。母さんと離れさせられるなんて……。
 世話をしてくれる人がいなくなるなんて……」
「おい……」
「ワシは、なんてかわいそうなんだ」

もう一度、言ってみろ。

パシンッ。

気がついたら私は、父の頭をはたいていました。
無意識のうちに力の加減はしていたようで、怪我を負わせたりはしていなかったのですが、こらえてきた感情が爆発するのを抑えることはできませんでした。

「痛いがや! 孝ちゃん、何すんの~」
父は、心底驚いたような顔をしています。
「もう一度、言ってみろ」
「痛いがや」
「違う、その前」
「何かワシ、悪いこと言った?」
「いいから、もう一度、言ってみろ」
「ワシがかわいそうだ」

私は父の胸ぐらをつかむと、鼻先まで顔を近づけて言いました。
「そう、それだ。もう一度、言ってみろ」
おそらく、鬼のような形相をしていたと思います。

「ワ、ワシがかわいそうだ」
父はおびえながらも、そう繰り返しました。

ふぅ。

ため息をついた私は、父の胸ぐらから手を離し、父にわかる言葉を選びながら話し始めました。

【闘病編・第13回】入院の日。 その7については、こちらへ。

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