親ケア奮闘記Part2【闘病編】

【闘病編・第6回】入院しましょう。

母さんが、母さんが……!

紆余曲折があったものの、週に1回のペースーで母はクリニックに通うようになりました。
毎週私が仕事を休んで付き添うわけにもいかないので、送迎は父の役目です。
電話などで確認したり、週末に帰省したときに様子を見る限り、ちゃんと通院しているようですし、薬も飲んでいるようでした。

これでどうにか快方に向かってくれるはず……。
私は元通りの優しく明るい母に戻ってくれる日を、心待ちにしていました。
しかし、母の妄想や幻聴は特に軽減することもなく、2カ月が経ちました。

3月の初め。仕事をしている私の携帯電話が鳴りました。
発信者名を確認すると、私がしばらく前に緊急連絡用として買い与えた両親用の携帯電話からです。
この前の帰省のとき、「使うのがなんだか怖い」とか言って放ったらかしにしていたのを注意したので、使ってみる気になったのかな?
そんなことを思いながら電話に出ると、父からでした。

「孝治、大変だ!」
「ん、どうした?」
「母さんが、母さんが……!」
「どうした? 母さんに何があった?」
職場のみんなが私のほうを見ていますが、そんなことには構っていられません。

「母さんが入院……」
「えっ? 急に入院したの? 今通っている心の病気で? それとも別の病気か怪我?」
「ワシはもう、どうしてよいのか……」
「いや、とにかく落ち着け」

焦る気持ちをこらえ、
ちょっとしたパニックになっている父をなだめていると、電話の向こうから「父さん、そんなに騒ぐやない」と母の声が聞こえてきました。
どうやら、母の命に別状はないようです。

「父さん。まず母さんに電話を替わって」
「あぁ……」

いい加減にしろ!

少しして、母の声が聞こえました。
「……もしもし?」
「あ、母さん。何か急なことでもあったの?」
「……それが孝治、エライことだ」母の声のトーンも、何かいつもと違う気がします。
「ん? どうしたの?」
「今日クリニックに行ったら 『うちでは治しきれないから、専門の病院でしばらく入院しましょう』って」

ふぅ~っ……。
母の話を緊張して聞いていた私は、思わずため息をつきました。
もちろん通院だけで治ってくれるのがベストですが、治療の流れの一つの可能性として、入院することも十分にあり得ると考えていたからです。

「なんだ、もっと大ごとかと思ったよ」
「こんな大ごとがあるもんか!」
珍しく、母の怒声が聞こえます。
「ごめん、ごめん。最初は母さんが大きな怪我でもして死にかけてるのかと思ったから……」
「そのほうが、よっぽどマシだ」
「いやいや……」
「こんなことなら、医者になんか診てもらうんじゃなかった」
「あのな……」
「私はもう、生きていけない」

「いい加減にしろ!」
再び、職場全員の注目が私に集まりました。
明らかに普段と違う様子の私を、みんな驚いた顔で見つめています。
「とにかく、今日の仕事を早く片付けて、22時過ぎになるけどそっちに帰るから、それまでおとなしく待ってて! 『しっかり治す』って約束したのは母さんだろ!」

携帯電話を切り、さっきとは違ったため息をついた私に、隣の席の同僚が「横井さん、なんかよくわからないけど頑張ってね」と声をかけてくれました。

【闘病編・第7回】入院の日。 その1については、こちらへ。

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