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介護の本書評「review-kaigo」

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第413回 子育てと介護のダブルケア

26事例に支援の専門家がコメント

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

子育てと介護のダブルケア
渡邉 浩文 (著), 森安 みか (著), 室津 瞳 (著), 植木 美子 (著), 野嶋 成美 (著)

内容

女性の晩婚化に伴う出産年齢の高齢化(晩産化)、少子高齢化、核家族化などを背景に増えつつあるとされているのが「ダブルケア」。ダブルケアとはいったい何なのか、どうすれば最適なサポートが行えるのかなどについて、専門家が26の具体的な事例をもとに支援の視点を紹介している。

書評

「ダブルケア」とは、広義においては、家族や親族などの親密な関係のなかで複数のケアが発生し、複合的な課題が発生している状態を指す。狭い意味では、子育てと親などの介護が同時進行している状況を指す。本書では、特に後者について紹介されている。

本書では、第1章でダブルケアの基本的な考え方や現状などについて紹介、説明されている。第2章では、ダブルケアの26事例について、ダブルケアの経験者や当事者、専門職、研究者などがそれぞれの立場でコメントしている。第3章では、事例から考えられるダブルケアラーのニーズや支援について整理するとともに、高齢者介護、妊娠・出産、子育て、子どもへの影響、就労、当事者支援をテーマに、支援に必要なポイントや繋ぐべき社会資源について解説されている。

本書では、ダブルケアラー自身の語りに基づいた事例とそれに対する多種多様な専門職、ダブルケアラー・ダブルケア経験者の知見を取り上げ、そこからどのようなサポートが必要なのかが考えられている。ダブルケアラーのニーズは本当に多種多様で、ひとつの制度やひとつの支援で完結できるものはほぼない。それだけにそれぞれの事例から謙虚に学び、関わった人たちが知恵を出しあっていくことが必要だと感じる。もうひとつはケアの対象となる子どもや高齢者の支援を大事にすること。誰かが犠牲になるのではなく、みんなが幸せになる方法を考える必要がある。

筆者は、本書がダブルケアラーの生きづらさの軽減や、地域共生社会の実現の一助となることを願っている。

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