介護のコラムを読む

介護の本書評「review-kaigo」

戻る

第406回 認知症が見る世界

認知症患者には、この世界がこんなに冷たく見えている!

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

認知症が見る世界
吉田 美紀子 (イラスト), 田口 ゆう (著)

内容

「認知症患者はこの世界がどのように見えているだろう?」その疑問に対して、わかりやすい答えとなる本書。現役ヘルパーが介護現場の真実をリアルに描いている。認知症患者を徘徊や虚言などに駆り立てるのは、すべての行動の根源には、時間も場所、自分が誰かすらわからないという不安だという。本書ではそんな認知症患者の現実をリアルに描いている。

書評

本書は認知症患者の姿を漫画で描いている。特徴的なのが章立てだ。1章と2章はには要介護1~3、3章は老老介護、4章は要介護4~5となっている。多くがアルツハイマー型認知症患者を描いているが、前頭側頭型認知症や脳血管性認知症の患者も描かれている。

描かれている21人の認知症患者たちの物語を見て感じるのは、「認知症」とひと言でまとめられているが、その症状や状態、行動は十人十色だということ。10人いれば10通りの認知症の症状があり、現場のヘルパーの方々はそんな患者一人ひとりの症状や状態に合わせて介護をしたり、サポートしていることがわかる。

ただ、本書では患者たちの行動や様子がリアルかつ冷静に描かれているため、介護経験がない人にとっては学びになると同時に少しショッキングかもしれない。決して衝撃的な内容というのではなく、身近に感じすぎて明日にも描かれた現実がやってきそうで、一刻も早く将来の介護について考え、準備していかないといけないという気持ちにさせられる。

本書を読むと、認知症患者は時間や場所、自分自身が何ものかもわからない状態であり、その不安が彼らを異常行動に駆り立てていることがわかる。認知症患者が抱える孤独や苦悩をわずかでも知り、感じることができれば、実際に向き合った時に感じ方や行動が変わるような気がした。

親ケア.comオンラインサービス「繋がる」
おやろぐ