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介護の本書評「review-kaigo」

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第300回 認知症「不可解な行動」には理由がある

事例を交えて認知症の人と介護する人の心を読み解く。

認知症「不可解な行動」には理由がある (SB新書)

認知症「不可解な行動」には理由がある (SB新書)
佐藤 眞一

内容

認知症の人数は、2015年には260万人を超えている。高齢化社会の日本ではもはや認知症は特別なものではない。「介護する人はどう行動すれば良いのか」「認知症の人はなぜあんな行動をするのか」といった疑問について、20の事例をもとに人間行動学や心理学の観点から読み解いていく。

書評

認知症は特別なものではない。我々は認知症が特別な社会ではなく、認知症がごく当たり前の社会、認知症とともに歩む時代に生きている。現代日本は、誰もが認知症になる可能性を持っており、認知症を介護する可能性があるのだ。

「介護する人はどう行動すれば良いのか」や「認知症の人はなぜあんな行動をするのか」といった疑問に応えるために、本書では20事例を紹介しながら、認知症の人と介護する人の心と行動を心理学や人間行動学の観点から読み解いていく。

特に認知症患者の「趣味に無関心になる」や「人混みで立ち尽くす」、「金銭にこだわる」などの行動の裏側にはどんな心理が働いているのか、実際に本書を読んでみると「なるほど!」と納得できる部分が多かった。それは本書では認知症の人の行動が非常に細かくつぶさに描かれていたからだ。これは家族の許可を取り実現できたものだと言える。筆者と患者家族との間の信頼関係を感じた。また、認知症に関する基礎知識も掲載されている。

筆者が望むのは、本書が認知症とともに生きる時代のささやかな、でも確かな道しるべとなること。人生は唯一無二のもの。それを実感せずにはいられない一冊となった。

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