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介護の本書評「review-kaigo」

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第299回 介護のうしろから「がん」が来た!

乳がんと母の介護を両立する苦闘を描く

介護のうしろから「がん」が来た!

介護のうしろから「がん」が来た!
篠田 節子

内容

直木賞作家が、自身の両親の介護から自らの乳がん発覚から手術、治療まで赤裸々に書き記したエッセイ。自らのがん治療と両親の介護を同時並行で進めるにはどのぐらいのパワーが必要なのか、どういった気持ちで取り組むのがベストなのか、ユーモアあふれる筆致で綴られている。

書評

認知症の母に突き合って二十数年、ようやく母が施設に入所してひと息つこうと思ったら、今度は自分が乳がんになり、手術、術後治療、そして執筆の仕事など、息つく暇のない日常が赤裸々に描かれている。

がんの手術を経て、母の介護現場に戻る時、筆者はどう考えただろうか。しかも乳がん関連の手術を2回も受けている。1回目は乳がん摘出手術、そして2回目は乳房再建手術。そして入院中は大変だが介護の現実からは解放される。

そして、退院後は再び母の介護に奔走する筆者。有料老人ホームやグループホーム、もちろん病棟のベッドも。在宅介護を精神論や美談でまとめられている本があるが、現実は笑いも微笑みもなく、さらには哀しさすらないという。なぜなら哀しんでいる暇がないからだという。

しかしよくよく考えれば、両親が介護される年齢になる頃は、子どもたちが50歳を過ぎた頃。それって、まともにがんになる人が多いタイミングでもある。そう考えれば、介護とがんが同時にやってくる人は決して少なくはないだろう。その時をいかにやり過ごすか、メンタルを正常に保つかが、介護される両親にとっても本人にとっても幸せのバロメーターになるのかもしれない。

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