介護の本書評「review-kaigo」 第201回〜

第296回「ひと喰い介護」

現代社会における倫理観の闇に迫るサスペンス。

ひと喰い介護

ひと喰い介護
安田 依央
集英社


内容


幼い娘を亡くし、妻に先立たれた72歳の武田清。彼に差しのべられた社会とのつながりは、転落への序章だった。体力が、判断力が、そして貯金が奪われていく……。現代社会の闇に焦点を当てたリアルサスペンス小説となっている。

書評

本書は小説だが、リアルサスペンスと謳うだけあって、非常にリアルである。

72歳の武田は、娘を亡くし、妻に先立たれて、想いを寄りかからせる場所を失っていた。そんな状況は高齢者の誰にでもあることだ。しかも、自尊心とプライドは現役時代そのまま。「株式会社ゆたかな心」に、少しずつ何かを奪われ、ちぎり取られていく様子がリアルに描かれ、なんとも言えない気持ちになる。

最初は善人でお客さまの立場に立ってものを考えつつも、徐々に本性を現し、年老いていく老人からすべてをむしり取っていく。まさにそれはハイエナという言葉がピッタリだと感じる。介護施設という閉ざされた空間で、ひとりの老人が心身を壊すのにさほど時間は掛からない。わずか5年ほどで主人公の武田は、身も心もボロボロになり、ついには命の炎が消えてしまう。そう、本書は全体を通して、老人がとてつもなく食いものにされていくだけなのだ。そこには救いすら存在しない。

そして読み終わると、なんとも暗い気分になる。だが、これは小説の世界だから暗い気持ちだけで終わることができる。現実の世界には、これと同じように喰いものにされている老人がたくさんいて、声すら上げることができない人がたくさんいるのだ……。

第297回「ひとりが要介護になるとき」については、こちらへ。

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