介護のコラムを読む

介護の本書評「review-kaigo」

戻る

第283回 親の介護で自滅しない選択

介護の悲劇に陥らないために「発想を変える」ことが必要。

親の介護で自滅しない選択
太田 差惠子

内容

介護という大変な事態に陥ると、人は「今」しか見えなくなる。そしてそれが永遠に続くと思いがちだ。本書は介護に対する発想を変え、自分に優しくなることで介護に振り回されず、自滅しない暮らしをするための情報がたくさん掲載されている。

書評

親の介護が始まると、多くの人が「自分の生活はどうなるのか」と考えるという。

介護の結果、介護うつになる人もかなり多いという。介護離婚に至った夫婦もいるという。介護離職した女性も少なくないという。中には介護殺人に至る息子もいたという。どれも筆者が20年以上介護現場を取材してきた中で数多く見て聞いてきた事実だ。こうした悲劇はなぜ起こるのか?社会のせい?親のせい?自分のせい?

悪者を探しても意味はない、と筆者。そして思うのが、少し発想を変え、固定観念を捨て、自分に優しくなってみないか、ということ。

本書は、一章を読みながら自身の思い込みがないか自問自答してほしい、と筆者。そして2章以降は好きなところから読んでほしいという。状況ごとに行動の選択肢が用意されており、それが自滅を防ぐヒントとなるだろう。ただ、自滅しそうな方を選択しても自滅どころか、皆が自分の人生を謳歌しているケースもある。介護は百人百様であり、正解はないのだ。

大事なことは、「自分さえ頑張れば」という想いを捨てることだという。そして「本当に必要か?」と自問自答してから一歩を踏み出してほしいと。考えた上での選択なら、たとえ自滅の選択であっても決して自滅することはないという。何よりよくないのは、介護に振り回されること。

「介護生活」という言葉が世の中で使われているが、人は介護をするために生きているわけじゃない。親のことは大切だが、親のために生きているわけではないのだ。介護は生活の一場面であり、介護をする子の人生を自滅させないよう、本書が役立つことを筆者は祈っている。

親ケア.comオンラインサービス「繋がる」
おやろぐ