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介護の本書評「review-kaigo」

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第255回 老いた親を愛せますか?

幸福の意味をいま一度考える。

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老いた親を愛せますか? それでも介護はやってくる (幻冬舎単行本)
岸見一郎

内容

老いた親とよい関係を築くにはどうすればよいか…それは人生の意味を深く考えること。動けなくなり、意識をなくしてしまった時に、なお生きる意味を見出すことはできるのだろうか…。アドラー心理学の第一人者がありのままの家族の関係を提言する。

書評

筆者はベストセラーとなった『嫌われる勇気』の著者でもある。若い頃にアドラー心理学に出会い、自らの哲学研究と並行する形で研究を続け学んできたという。そのきっかけは、自らが子どもと関わり日々試行錯誤する中で、その関係を改善しようとするために学んだという。

人間は対人関係が不幸の源泉であっても、人との関係を離れて生きる喜びや幸福を感じることはできないという。また、仕事で成功することは生きる目標にはならないとも。なぜなら、人は働くために生きているのではなく、生きるために働いているから。幼い時の幸福感に匹敵するような喜びを感じられるのでなければ、働く意味はないというのだ。

親は年を重ねておいてゆく。人間である以上避けられるものではない。そしてついには過去のことを忘れてしまうこともある。だが、そんな親を子は見捨てるわけにはいかない。親の現実を認めることは子にとっては辛いことだが、その現実を受け入れられなければ、親と関わることができないのだ。親に愛されて育った人も、認知症を患った親から愛されなくなった時にどうすれば良いのかを若く元気なうちから考えておかなくてはいけないという。

本書では、筆者の介護体験や看病体験を軸に、どうすればよい親子関係を築けるのか、看病や介護をする際に、どのようなことに留意すればよいのか、さらには親の介護や看病を通じて学んだことをもとに、どう生きていけばよいかを考え、その答えが記されている。介護の支えの一助となると感じた。

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