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介護の本書評「review-kaigo」

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第251回 ラストディナー

患者と家族が過ごす最後の時間が描かれている

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ラストディナー高齢者医療の現場から
老寿サナトリウム

内容

死を迎える瞬間まで自分の足で立つ、食事をする、趣味を楽しむ、笑顔で暮らす……。誰しも自分にとって望ましい人生の終わり方がある。闘病ではなく、穏やかに過ごすという選択で、その人らしい人生の締めくくりを迎えることができた人々のストーリーが綴られている。

書評

今の日本社会において、最期まで自分らしく生き、穏やかな死を迎えることはそう簡単なことではない。例え病気になっていなくても、高齢になれば身体のどこかに不調を感じ、いつの間にか生活に制限を強いられる。現実としてやりたいことも叶わず、食べたいものが食べられない高齢者は少なくないのだ。そしてベッドでの生活が長くなり、「死」が目の前に迫ってくると、今度は「命」という問題に直面することになる。

高齢者医療の分野では「尊厳死」の扱いについて活発な議論が行われている。「尊厳死」とは本人の意思に基づいて延命措置をしないこと。人生の末期であることを医者が認めた時、生命を維持することを目的とした治療を選択して「生」をめざすのか、延命治療はせずに命が自然に尽きるのを静かに待つのかを選択することになる。

だが、尊厳死の宣誓書にを描くことに賛成する人は多いが、実際に書面を残している人はわずか。そうなると、一刻を争う時に望まない延命治療が施されてしまう可能性がある。そうならぬよう、やっておくべきことを的確に発信し、やりたいことをできるだけ奪わず、本人が「良い人生だった」と思えるような最期を提供することこそ、高齢者医療に携わる人の使命と言えるのかもしれない。

本書では、患者が最期まで「その人らしい人生」を過ごし、家族にとっても仇やかな「看取り」となった8つの物語が紹介されている。患者さんとその家族にとって、「どこで最期を迎えるか」で人生の幕引きが希望通りにできるかどうかの分かれ目となるのだ。

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