介護の本書評「review-kaigo」 第201回〜

第248回認知症・行方不明者1万人の衝撃

悲劇はすぐ側で起きている!

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認知症・行方不明者1万人の衝撃 失われた人生・家族の苦悩 (幻冬舎単行本)NHK「認知症・行方不明者1万人」取材班


内容


テレビ番組・NHKスペシャルで報道されたのは、認知症やその疑いがあり、徘徊などで行方不明になった人が1年間で1万人いるという。死者や行方不明者は500人を超え、身元不明のまま保護され続ける人も多数存在するという。本書では、番組放送に向けて調査して得られた情報や事実を紹介している。

書評

NHKスペシャル取材班が認知症やその疑いがある人の行方不明の調査を始めたのは2013年11月。取材班が取材を始めて最初に気づいたのは、行方不明の実態を正確に把握し、再発防止に取り組む公的機関がどこにもないという事実だった。警察や自治体は、行方不明者を捜すことはあっても、個々の事案の情報を収集して分析はしていなかったのだ。そこで調査班は、全国の400を超える家族の声に耳を傾けることになる。

取材班が積み重ねた事実は社会を動かした。警察庁、厚生労働省、全国の自治体が対策に乗り出したのだ。そしてテレビ放送を通じて、身元不明のままだった人が家族との再会を果たすことになる。だが、調査班は釈然としない気持ちが残った。何年も人の身元が特定できない社会とは何なのか……。

確かに数年ぶりの再開は心温まるものだった。素晴らしいことだった。だが、失われた時間を取り戻すことはできない。長い時間を掛けて刻み込まれたダメージは将来にわたって消えることはないのだ。

「認知症になっても安心して暮らせる街づくり」というのは、国が掲げるスローガンだ。だが、行方不明者の実態を見れば、とても実現しているとは言い難いだろう。でも国を責めてもしょうがない。社会全体、国民一人ひとりが、弱い人に目を向けてこなかったからだ。

将来、認知症患者が増え続けることで、この問題は誰もが当事者となり得ることだ。新たな悲劇を生み出さないためにも本書を一読することをおすすめする。

第249回「親の介護をする前に読む本」については、こちらへ。

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