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介護の本書評「review-kaigo」

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第236回 ヘルプマン!! 介護蘇生編

「胃ろう」の認識は誤解されている。

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ヘルプマン!! 介護蘇生編 1 (朝日新聞出版)
くさか里樹

内容

2003年から11年間、講談社「イブニング」で連載された漫画「ヘルプマン」。第40回日本漫画家協会賞大賞受賞、日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞特別賞受賞など、輝かしい受賞が並ぶ。今回は介護蘇生編として、「胃ろう」をはじめとした長生きするための措置について考える。

書評

「肺炎を併発させたくなかったら、口から食べさせるのは厳禁です。「胃ろう」でいいですね?」という言葉が背表紙を飾り、表紙には「胃ろうになった高齢者が経口食に復帰できる確率は6.5%。日本は胃ろう大国なんだよ。」という文字が躍る本書。介護業界をリアルに、そして面白く描いた「ヘルプマン」が帰ってきた。

日本の胃ろう人口は、おおよそ40~50万人と予測されている、この数字は医療技術の高さを誇ると共に、口から食べることを疎かにしていることも示している。現代社会は、有史以来、誰もが望んだ不老不死の社会に近づきつつあるはずなのに、誰にも歓迎されていないという不思議な状況。原因は、マスコミによるネガティブキャンペーンが大きいのかもしれない。

特に本書で取り上げられている「胃ろう」については誤解が大きいと作者や専門家も語っている。また、医師による誤解も大きいという。だが、高齢者が口からしっかり食べて栄養を摂るには、それなりの人出やコストが必要になる。現実的には非常に難しい作業なのだ。

だが、最終的には「食べることの意義」を考えていくしか解決の方法はないと専門家も語っている。「ヘルプマン」は介護漫画だが、人間関係を描く漫画だと作者。介護は人と人の間でしか成立しない。介護はその人間関係が最も濃厚に現れる現場なのだ。「すべての人間のさけられない老いと死の闇に、光と救いを与える奇跡の漫画」という瀬戸内寂聴氏のコメントもあながち大げさではない。

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