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介護の本書評「review-kaigo」

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第222回 高齢者住宅が危ない

介護現場の現実は制度を崩壊させかねない状態だ。

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高齢者住宅があぶない 介護の現場でいま何が起こっているのか
濱田 孝一

内容

激増する無届け施設、横行するブラック高齢者住宅、縛り付けられる老人、深刻化する虐待。金持ち優先の特別養護老人ホーム。そして行き場がなくなる高齢者たち……。このままでは介護制度は崩壊しかねない。業界再生の道はあるのだろうか。高齢者住宅コンサルタントが業界の闇をあぶり出す。

書評

今、高齢者住宅で何が起こっているのか。無届け施設における入居高齢者への虐待報道が世の中を騒がせている。暴言や暴力に始まり、無用な身体拘束、汚物の放置など、虐待や暴力の種類はさまざま。中には、o-157に集団感染し、たくさんの高齢者が死の危険に直面する事故も起こっている。無届け施設は劣悪な環境の中でスゴさせられているのだ。

だが、自分の意思で臨んで無届け施設に入所している高齢者は一人もいないはずだ。自宅でも生活できず、特養ホームに入所することもできないからここにいるのだ。人間として最低の権利も認められず、手足を縛られて暴言を吐き続けられる生活だ24時間365日、死ぬまで続くのだ。それが日本の高齢化社会のひとつの現実でもあるのだ。

こうしたセーフティーネットが機能しない現代社会となった原因は、特養ホームや社会福祉法人の一部が福祉を利権としているからだという。今後、自宅で生活できない高齢者は激増する。社会インフラとしての優良な高齢者の住まいの確保、立て直しは不可欠だ。本書では、「高齢者の住まい」の現在の課題は何か、今後どうしていくべきなのか、そのあるべき方向性が記されている。

高齢者介護は将来性の高い仕事だと語る筆者。だからこそ、市場評価や市場価値を重視しなければならないという。給与や待遇だけではなく、働く満足度を向上させることでサービスの質が向上し、高齢者介護の未来像を示すことができた事業者だけが生き残り、劣悪な事業者は淘汰されて消えていく……そんな状況にしていく必要があるのだ。本書は、その未来像を示す一筋の光になると感じた。

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