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介護の本書評「review-kaigo」

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第219回 人生を狂わせずに親の「老い」とつき合う

「介護崩壊」の時代に親子の絆を守る方法。

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人生を狂わせずに親の「老い」とつき合う 「介護崩壊」時代に親子の絆を守る (講談社+α新書)
和田秀樹

内容

親の介護のためには息子が会社を辞めなくてはならない。高度成長期の日本のサラリーマンには想像できなかったことが、今では当たり前の時代。その上、自分が高齢者になったら誰にも看てもらえない、受け入れる施設がない状況になるかもしれない。そうならないために、今をどう過ごすかが解説されている。

書評

医療の世界では、最近「医療崩壊」という言葉が話題になっているという。医師不足で患者さんを診られなかったり、医療行為そのものが立ち行かなくなる状態のことを指す。だが、介護の世界はすでに「介護崩壊」と言える状況下にあるという。

例えば、介護うつの人が確実に増えているという。うつが進むと、介護を苦にした自殺が増える。筆者は介護うつに罹患しているのはすでに10万人前後いるのではないかと推測している。そしてさらに深刻なのが、被介護者を殺してしまうこと。また、殺してしまうとことまで行かなくても、日常的に虐待を行ったり、介護放棄などに及んでしまう人もいる。しかも悲惨なことに、普段介護を一生懸命やってきた真面目な人ほど虐待に及んでしまうことが多いのだ。こういった事態は公的介護がしっかりと整備されていれば、防げる可能性が高かったかもしれない。

介護の世界は何かと美談がまかり通る。そのせいか一人で抱え込んでしまう人が多い。本書では、もし認知症を感じさせるような兆候が、自分や親に出た場合は、一人で抱え込まずに何でも頼れるものは頼ることを進めている。介護美談の常識を覆してこそ、介護の平和はやってくるのだ。

人間、遅かれ早かれほぼ確実に介護が必要になる。「その前」の準備を考えておかないと、安心して日々を過ごすことができない時代がやってくる。必要な人にとっては、本書が老後を照らす一筋の明かりとなるかもしれない。

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