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介護の本書評「review-kaigo」

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第198回 介護退職

介護こそ、「今そこにある危機」である!

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介護退職 (祥伝社文庫)
楡周平

内容

ごく普通のサラリーマン家族が、地方に住む独居老母の骨折を機に、奈落へ突き落とされる。そこには、平穏な日々を崩壊させる「今そこにある危機」があった……。「少子晩産社会」が抱える脆さを突いた未来予測小説。

書評

三国電産北米部長の唐木栄太郎は取締役の椅子が目前。家族は妻と名門私立中学を目指す息子との三人家族。都内の自宅で、平和な日々を過ごしていた。そんなある日、秋田で独居する老母が雪かき中に骨折したと電話が入る。その時は、まさかそれが奈落への号砲とは知るよしもなかった……。

この本が凄いのは、多くのサラリーマンが抱えるであろう危険を描いているということ。そしてあくまでフィクションではあるものの、突拍子もないものではなく、現実的な予測手法で淡々と描いているということ。本書を読んで感じるのは、日本人が持つ3つの美徳こそが、この問題をさらに危うくするかもしれない、ということ。その3つの美徳とは、「東京一極集中の栄華」「年功終身雇用による安定」「受験重視の子女愛育」だ。そして、この危機から脱するには、原稿制作の拡充では追いつかないということもきちんと描かれている。

栄太郎をはじめとする唐木家の面々は、この危機を一体どうやって乗り切っていくのか。栄太郎はウルトラCの解決策を考え出すことができるのか……。本書は、平穏な日々を崩壊させる「今そこにある危機」を真正面から突きつける問題作と言える。

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