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介護の本書評「review-kaigo」

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第183回 暴走老人!

なぜ老人は暴走するのか?

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暴走老人!
藤原 智美

内容

年を取ることは精神的に成熟することだ、というイメージに従って高齢者を見ている。そして、「大人とは分別がある存在」という時、その対局として若者が無分別な存在だという思い込みがある。だが、昨今の現実はこうしたイメージとは大いに異なる。近年話題のキーワード「暴走老人」のルーツとなった一冊。

書評

若者による殺人事件などは1958年を境に徐々に減少傾向にあるという。近年、わずかに増加することもあったが、それでもピーク時よりも圧倒的に少ないということになる。近年、若者に公共心や道徳心が失われているとして、強化として組み込もうという動きがある。だが、本当に公共心や道徳心を失いつつあるのは高齢者かもしれないのだ。なにせ65歳以上の高齢者の検挙者数は、16年で5倍のかずに増加しているのだ。そう、まさに「暴走する老人」がデータとして増えているのだ。

筆者はその理由として時代の進化のスピードがあまりにも高速すぎるため、適応できないが故に起こっていると推測している。特にインターネットや携帯電話の登場が変化のスピードを加速させた原因であると語っている。このスピードの変化に適応できない高齢者は変化を変化として認識できず、昨日のように今日を生きようとするためにつまずくことになる。それが老人が生きる困難を感じ暴走化する一員になっているというのだ。
 
本書では、時間に対する感覚の変化、空間に対する感覚の変化、そして感情に対する変化の3つの側面からその変化を見ている。このような「時間」「空間」「感情」の急速な変化に対応するのは若い人でも努力を必要とする。老人にとってはさらに困難なことは間違いない。

経験則を大きなよりどころとする高齢者にとって、変化のスピードがあまりにも速すぎる現代社会は、「生」の基盤が脆弱と言える。老化は肉体的ハンディを生むが、同時に内面的不適応も生み出す。その現実に目を向けなけなければ、暴走する老人の増加を防ぐことは難しいかもしれない。

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