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介護の本書評「review-kaigo」

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第171回 介護はしないぞ 私と母の1000日戦争

ハラハラしてタメになる、ノンフィクション劇場!

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介護はしないぞ: 私と母の1000日戦争
井上 雅義

内容

親には元気で長生きして欲しい、そう願うのは子どもとしてごく当たり前のことだ。だが、そう思えなくなるときもある。そういった意味では老人介護は恐ろしい。本書は、母が認知症になり、『老人介護』という怪物と戦った母と息子夫婦の奮闘記である。

書評

介護放棄、老人虐待、孤独死など、高齢者にまつわる事件やニュースに事欠かない時代になってきた。だが、誰もがそんな事件は他人事と思っているだろう。親が高齢になっても、親と子どもの人生は別物であり、親の老後は親自身が考えるもので関係ないことだと思っているだろう。実際に筆者もそうだったという。

だが、そんな筆者の母が認知症の兆候を見せ始めたところから状況は激変する。親の認知症は、どんな家族でも青天の霹靂だ。ゴミ屋敷の中で生活する母を見つけ、介護の決心をする息子。だが拒否して反発する親に手こずることになると、母への想いは反省と憤りが同時に生まれることになる。

親の介護は試練なのか、親が認知症という老人病の被害者なら、子どももまた老人介護の被害者ではないのか、と筆者は考える。介護は未来の希望も終点も見えにくい。それだけに敬遠したり先送りにしてしまって、対策が後手後手になり、苦労も増大することになる。

本書では、終わりの見えない老人介護に翻弄され続けながら、他人の手を借りることでどうにか老人介護を客観的な視点から距離を持ってみることができたという筆者の奮闘記である。人が年老いて生きる意味や、老後の人生を考える参考書になるかもしれないと感じた。

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