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介護の本書評「review-kaigo」

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第170回 やりなおし介護保険

2020年までに介護保険を生き返らせる方法を提言。

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やりなおし介護保険: 制度を生まれ変わらせる20の方法 (単行本)
増子 忠道 宮崎 和加子

内容

日本の介護保険は崩壊の危機にある、と語る筆者。本来介護保険は、介護が必要な人に対して公的に保証する制度として生まれた利用しやすいようにすることが制度設計の基本だった。だが、誰もが使える保険制度からはどんどん遠ざかろうとする介護保険。筆者は、介護保険の抜本的改革に向け、具体的な提案を行っている。

書評

国家財政が危機的な状況とされる中、介護保険は自己負担割合の上昇とともに、公費負担も増やそうとしている。一見、正しい施策のように思えるが、実はそうではないと筆者は語る。公費負担が増えても自己負担割合が上昇すれば、本来介護保険を受けるべき人が受けることを躊躇するからだ。

介護保険は国民にわかりやすく、本当に役立つ保険を目指して抜本的な改革が必要だという。そして、介護従事者がイキイキと働き、事業所は安定して事業を続けられる環境。結果的に、効率的な運営が可能になる、そんな仕組みの構築だ。介護保険を抜本的に改革し、本来の目的を達成するには、自縄自縛から逃れる必要がある。そのために、筆者が本書で提案している方策は以下の通りだ。

・国民が必要としたら、いつでも誰でも介護保険が使えるようにする。
・面倒な要介護認定を改め、直ちに必要な介護が受けられるようにすること。
・介護と医療の棲み分けを明確にすること。
・居宅での支給限度額を撤廃し、本当に必要な介護を提供できるようにすること。
・地域に根ざした適切なトータルマネージャーを育成すること。
・国民が介護保険の運営に直接参加できる仕組みを作ること。
・国民が介護保険を有効利用できる制度にし、保険料徴収をやめること。

これらの抜本的改革を実現すれば、本当の『介護補償制度』へと脱皮できる、と筆者は語る。介護保険制度を新たな視点から見ることができる一冊と言える。

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