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介護の本書評「review-kaigo」

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第85回 誰も語りたがらないウンチとオシッコの話

トイレ付き介護マットレス開発者の22年間もの「わが闘争」。

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誰も語りたがらないウンチとオシッコの話
勝屋なつみ

内容

「介護=排泄」が一番の感心だという人も多くない。排泄は人間が生きている証、と言えるのかもしれない。紙おむつが一般的になりつつある現代介護の世界において、ベッドから動かずに排泄ができるトイレ付き介護マットレス開発者の22年間にわたる開発の経緯や苦労について記されている。

書評

「排泄問題が省力化できれば、少なくとも社会的入院は確実に減る」と語る、トイレ付き介護マットレスの開発者。

大人用紙おむつのCMが大量に流れる中で、介護の世界における排泄問題は紙おむつに頼っているのが現状だ。また、「ベッドとトイレは別、一緒ではリハビリにならない」と声高に叫ぶ専門家。だが、このマットレスの開発者は「寝たきりで動けない人は確実に増加している。動けない人は全員紙おむつで死ねということなのか?」と感じた。人間、死ぬ前に長いか短いかはわからないが、動けない時が必ず来るのだ。でも、それを自分の問題として考えている人は非常に少ない。

本書は、トイレ付き介護マットレスを紹介する本だ。だが、それだけにはとどまらない。人間が生きている間、必ずやり続ける「排泄」という行為について、真正面から向き合っている。あまり楽しい話ではないが、必ず全員が関わる問題なのだ。

寝たきりになったらリハビリか紙おむつ。日本の現代介護はこの二択なのだ。しかもリハビリが無理になると紙おむつの一択。排泄介護は在宅介護で最も大変だ。仕事や家庭の事情でやむなく施設を利用するのもこの理由が大きいのだ。もしかしたら、このマットレスが日本の介護や施設のあり方を変えるかもしれないと感じた。

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