
【第23回】タクさん語録 その3(2006年8月5日)
〜タクさん語録【認知症初期〜末期】
[認知症初期・中期]
父と二人でよく歯医者に通いました。 その帰りに必ず入るケーキ&喫茶のお店。 ここで、父はいつもパイプタバコをくゆらしながら、 「どこを見渡しても、俺のようにパイプタバコが似合う人間はいないな〜♪」と、 笑顔で実に自信たっぷりに言うのでした。 そして、いそいそとパイプの掃除をするのです。 その言葉に乗って、おだててあげれば父は大満足でした。
店のトイレの場所も間違えず、一人で行くことがまだできました。
喫茶の後は、同じ通りにある輸入タバコやパイプなどを置いているタバコショップへ行きました。 棚に沢山の輸入物の刻みタバコが並んでいて、 「あの、○○ゾルゲン一つ!」ってな具合にステッキでお気に入りのタバコを指し、 パッケージのドイツ語も読んでいました。 父はタバコだけに限らずドイツ製品が好きでした。 「特選街」という雑誌の愛読者で、見栄っ張りなところがありました。
一応紳士っぽく、格好良く買物をするのですが、金銭支払いはできなくなっていました。
それでも、認知症になる前からの習慣で、 「おい、ちょっと待て!」と私に言って、 買物した物や金額を手帳にメモっていました。
文字はまだ書けました。
そのうち、パイプを壊すことが増え、私も刻みタバコを買い忘れたふりをして、 父は自然とタバコから遠のくようになりました。 タバコを吸うことを忘れ、パイプが何だかわからなくなりました。
父とよくF病院にも通いました。 広い待合室で待っている間、父は来ている患者さんをよく眺めていました。 まだ、この頃は周りを見回す余裕がありました。
今は自分の足元しか見てません。
「あんなハゲ頭は嫌だな〜♪俺はハゲてないからな〜!」 「お父さん、そんな大きい声で言うと聞こえるよ!」と私。
元々髪が多く白髪の父でしたが、さすがに今は後頭部が薄くなりました。
「あれは男か女か??」 確かに年寄りになると、判別がつき難い人もいらっしゃいますが、 お年寄りを指して平気な顔して言うので、周りに聞こえないか冷や冷やもんでした。
今は、あまりに小さい声なので、聞き取るのが大変です。
F病院のセルフサービスの食堂で、トレイに乗せた定食を こぼすことなく運ぶこともできました。 「どうだ!上手いだろう!味噌汁はこうして運ぶとこぼさないんだぞ」と得意気に ニヤッと笑って、コツを教えてみせました。
今ではスプーンでこぼさず口に入れることさえ、上手くできなくなりました。
(続く)
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