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親ケア奮闘記〜ある日、親が壊れた〜


【激動編・第41回】退院の日。 その3

杞憂。


外泊2日目。
私は津駅まで両親に送ってもらい、大阪に1人で戻りました。

これは、過去の外泊時にも何回か繰り返してきたこと。
両親2人だけの状態でちゃんと暮らせるのか、
薬を飲み忘れたり、病院に行くのを嫌がったりしないのかなどを確認するため、
主治医と相談して、わざと私がいない状態を作るように決めたのです。

心配は尽きないものの、私が三重県で同居するわけにいかない以上、
両親が自立した暮らしに戻ることは必須条件。
1日目の夕方、ケアマネジャーのKさんに退院が決まりそうなことを伝えるついでに、
様子を見に行ってもらうように頼みました。

大阪では、留守中の仕事が山のように溜まっています。
しかし、母が退院できるかどうかの状況では、なかなか集中できません。
同僚から「身体の調子でも悪いのか」と心配される始末でした。

そうこうするうちに、3泊4日の外泊も終了。
両親だけでなく、Kさんや主治医とも連絡を取り合って大きな問題がないのを確認し、
とうとう1週間後に退院することが決まりました。
私の心配は、めでたく杞憂で終わったのです。

主治医との電話を終えて職場に戻った私を端から見れば、
今にも歌い出しそうなほどご機嫌だったことでしょう。


ご主人の言う通りです。


退院の日は、よく晴れていました。

入院したときは雨に降られて、ただでさえ辛い気持ちが、いっそうブルーになったなぁ、
などと思いつつ、病院に近い駅で父と合流。

母の荷物は、病院側できれいにまとめてくれていたので、
病室から運び出すにも時間はかからないはずです。

病室に行くと、母が一生懸命に話をしている後ろ姿が見えました。
どうやら、入院以来、何かと仲良くしてくれているIさんというお婆さんに、
お別れを告げているようです。

「……しんどいときも、Iさんが……」
「……」
「……だから、私は……」
「……」

Iさんの言葉はボソボソとしており、私にはよく聞き取ることができなかったのですが、
母にはよく伝わっているようです。
Iさんの手を取って、母なりに精一杯の感謝を伝えているようでした。

Iさんには確かにお世話になったし、
母が無事に退院できるようになった一因でもあるなぁ、と私が考えていると、
父が空気の読めない行動を。
「母さん、こんなボケた人ばっかりのところからは、早く帰るがね!」と、
大声で声をかけたのです。

母と私の非難のこもった目にも気づかず、父は「早く、早く!」と騒ぎ続けます。
そして「ワシ、本当はこんなとこに来るのはイヤだがね!」と、ひと言。

配慮のカケラも感じられない発言。
我が親ながら、あまりの情けなさに涙が出そうになりました。

頭をはたいて怒鳴りつけようと、父のほうに足を踏み出したとき、
私の後ろから「ご主人の言う通りです」と、主治医の声が。
「横井さんも、ご家族も、本当に辛かったと思います。
 ご自宅でゆっくり暮らせるなら、それが一番。
 入院が必要な状態には、二度とならないでくださいね」

私たちはただ、頭を下げて感謝の言葉を述べることしかできませんでした。

こうして母の約1年にわたる入院生活は終わり、再び父との二人暮らしがスタートしたのです。

(続く)


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