
【発端編・第14回】マクドナルドにて。
何、食ってるんだよ。
広い店内を探しまわり、ようやく父を発見したのは、 店内に併設されているマクドナルド。 父は嬉しそうにハンバーガーとポテトを食べていました。
「……こんなとこで、何してるんだ?」 「おぉ。これ、うまいぞ」 「いや、だから俺たちが夕食の買い物をしてる間に、なんで飯食ってるんだよ?」 「だって、お腹が減ったもんで……」 「勝手にいなくなるから、さんざん探したんだぞ。 30分やそこら、おとなしく座って待つこともできないのかよ……」
なぜ怒られているのか理解できないらしく、父は不満そうな顔をしていました。 そしてまだ、あきらめずにハンバーガーの残りを頬張っていきます。
「今、好きなだけハンバーガー食ったんだから、父さんは晩飯抜きね」 「えっ……。なんで、そんなひどいことを言うんだ?」 「だって、ハンバーガー2つも食ってすぐに晩飯にしたら、身体に悪いだろ」
みるみる父はしょんぼりとし、哀れみを誘うような声で言いわけを始めました。 「まさか夕食の買い物をしているなんて思わなかったもんで……」 「ちょっと小腹が空いたもんで……」 「ズボンのポケットに財布が入っていたもんで……」
あまりにツッコミどころの多すぎる話に付き合うのが馬鹿馬鹿しくなり、 私は横にいる母のほうを振り向き、三人で一緒に帰ろうと話しました。 しかし母は、既に先ほどまでの明るさを失い、何かを恐れるような表情をしています。
父にも油断できない。
「孝治、父さんが誰に連れてこられたかわかるか?」 母の質問に、私は頭を抱えそうになりました。 せっかく明るい兆しが見えそうな感じだったのに。
「父さんが勝手に来て、勝手に食ってただけだから。 心配して損したね。このまま置いて帰ってもいいぐらいだよ」 努めて明るく、冗談交じりに話す私に、両親からそれぞれ反発の声が返ってきました。 「なんでお前にはわからない。アイツらのせいに決まっている」 「孝治、わしは何も悪いことしてないのに、なんでそんなことを言うんだ?」
結局、二人を実家に連れて帰るのに、私はかなりの労力を払うことになりました。 なんとかなだめてショッピングセンターを出て実家に戻る車の中でも、 母の妄想と父のくだらない言い訳を聞かされ続け、 「いい加減にしろ!」と怒鳴りたいのを、ぐっとこらえ続けました。
なかなか、うまくいかないなぁ……。
それまで私の意識や心配の念は、心を病んでいるであろう母に向けられていましたが、 どうやら父親にも油断がならないことがわかり、 苛立ちと困惑が私のなかに広がっていきました。 (続く)
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